仮想通貨市場の盛り上がりに合わせて、ニュースやSNSで「暗号資産」や「仮想通貨」という言葉をよく聞くようになったという人も多いと思います。
本記事では、暗号資産と仮想通貨の違いや定義、その特徴をなるべく分かりやすく説明していきます。
暗号資産とは
最近至る所で目にする機会が増えた「暗号資産」や「仮想通貨」といった言葉ですが、実際にはどのようなものなのでしょうか。
結論、「暗号資産」と「仮想通貨」は同じもの
「『暗号資産』と『仮想通貨』は何が違うの?」という声をよく聞きます。
結論からお伝えすると、「暗号資産」も「仮想通貨」も同じものです!
以前までは「仮想通貨」と呼ばれていましたが、「通貨」という名称が日本円などの法定通貨と混同されやすいという背景などから、2019年に成立した『資金決済法および金融商品取引法の改正法』により正式名称が「仮想通貨」から「暗号資産」へと変更されました。
また、世界的にも名称の変更が見られます。従来は「Virtual Currency(仮想通貨)」や「Cryptocurrency(暗号通貨)」と呼ばれていました。しかし近年、公式な場では「Crypto asset(暗号資産)」という呼称が使われるようになってきています。日本も国際基準に合わせて呼称の見直しをしたということですね。
「暗号資産」と「仮想通貨」が同じものということは分かりましたが、「暗号資産(仮想通貨)」とは一体どのようなものを指すのでしょうか。
暗号資産(仮想通貨)の定義
「暗号資産(仮想通貨)」とは、ブロックチェーン上のデータであり、インターネット上でやりとりができる財産的価値のことを指します。『資金決済に関する法律』では以下の性質を持つものと定義されています。
- 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- 電子的に記録され、移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的なものですと、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などが挙げられます。
しかし、暗号資産にはコイン(通貨)としての側面以外にも様々な種類や目的があります。
暗号資産(仮想通貨)の種類
ビットコインやその他の18,000を超える(*2022年3月時点)アルトコインに代表される暗号資産(仮想通貨)ですが、コインとしての側面以外にも以下の用途などで利用されています。
- 不動産の登記情報
- 病院やクリニックのカルテ
- 個人情報管理
- 知的財産の売買
- 美術作品や音楽などのアート
上記では暗号資産(仮想通貨)の種類の一部を挙げましたが、他にも多くのプロジェクトで利用されており、先述したように、暗号資産(仮想通貨)はあくまで『ブロックチェーン上のデータ』であるため、ブロックチェーン技術の発展と拡大に伴い、今後もさらに多くの分野で活用されることが見込まれています。
暗号資産(仮想通貨)の特徴
これまで暗号資産(仮想通貨)の定義や種類を見てきましたが、他にはどのような特徴があるのでしょうか。
非中央集権的な仕組み
日本円や米国ドルなどの法定通貨は、国家や中央銀行などの機関が中央管理者として通貨を発行し信用を担保しています。一方で、ブロックチェーン技術を土台に成り立っている暗号資産(仮想通貨)には、銀行のような中央管理者が存在せず、複数のネットワーク管理者たちによって監視され価値が担保されています。
また、非中央集権型の仕組みを採用していることで、ダウンタイム(機能が停止している時間)が比較的少ないことも特徴として挙げられます。
中央集権的なシステムの場合、銀行のサーバー障害などが発生すると、同時にすべてのネットワークが機能停止になりますが(実際に大手銀行でもニュースになっているのをよく見ますよね)、複数の監視者たちによって管理されている暗号資産(仮想通貨)では、ネットワーク全体が機能停止となるようなことはほとんどありません。
発行上限枚数が決められている
日本円や米国ドルなどの法定通貨は、中央管理者(中央銀行)がその時々の経済状況を鑑みて供給量を調整していますが、中央管理者の存在しない暗号資産(仮想通貨)では供給量を常に調整することはできません。そのため、多くの暗号資産(仮想通貨)では、通貨の価値が大きく下落したりすることのないよう、通貨の発行上限枚数が予め決められています。
安価で簡単な個人間送金
法定通貨を誰かに送金する際、大抵の場合には銀行や送金サービスなどの第三者を介して送金する必要があります。しかし、暗号資産(仮想通貨)の場合、第三者を介すことなく、個人間で直接送金することができます。そのため、法定通貨の送金に比べて、安価な手数料で簡単に送金が可能です。
データの改ざんが難しい
「暗号資産」「仮想通貨」という呼称や「インターネット上のデータ」という説明を聞くと、「安全なの?」と思う方も多いと思います(実際に筆者も初めはそう思っていました)。
しかし、暗号資産(仮想通貨)の土台となっているブロックチェーン技術には、「データをブロックと呼ばれる形で格納しネットワーク参加者全員で管理することで、データ改ざんなどの不正を防ぐ」という特徴があります(ブロックチェーンの詳細については別の記事で説明します)。
そのため、名前を聞くとちょっと不安に思う暗号資産(仮想通貨)ですが、実際には不正の起こりにくく安全ということが分かりますね。
暗号資産(仮想通貨)の注意点
メリットも多く魅力的な暗号資産(仮想通貨)ですが、同時に危険性や注意点なども多くあります。
価格の変動
株やFXなどの投資でも価格変動によるリスクはありますが、暗号資産(仮想通貨)の場合、価格の変動が激しい傾向があり、1日でコインの価値が20%上昇/低下することも珍しくありません。
実際に、ビットコインの価格は2021年4月に600万円台まで上昇し、その後同年5月には300万円台まで暴落し、その他の多くのコインでも大きな変動が見られました。
大きなリターンを狙える一方で下手をすれば全財産を失うなどの可能性もあるため、まずは無理のない範囲で始めることが大切です。「一発逆転を狙って(生活費なども含め)貯金を全て投資!」などは絶対にやめましょう。
サイバー攻撃・ハッキングの可能性
暗号資産(仮想通貨)のブロックチェーンはデータの改ざんや不正が難しく安全である一方で、取引所やウォレットへのサイバー攻撃は後を絶ちません。実際に、取引所が不正アクセスされ多額の資金を盗まれるといった事件も過去に起きています。
自分が被害に遭わないためにも、パスワードや秘密鍵の管理徹底、コールドウォレット(インターネットから切り離されオフラインで管理するウォレット)の活用など、しっかりと対策をすることが必要です。
秘密鍵の紛失
暗号資産(仮想通貨)はウォレットと呼ばれる「暗号資産(仮想通貨)専用のお財布」で管理をします。それぞれのウォレットにはパスワードとは別に秘密鍵と呼ばれるキーが設定されており、仮にパスワードを忘れてしまっても秘密鍵を使ってウォレットを復元することができます。
1つのウォレットで全資産を管理している場合、秘密鍵の紛失は全資産の紛失に繋がります。家の鍵の場合、無くしても再度作り直すことができますが、秘密鍵を無くしても作り直してウォレットにアクセスすることはできないため注意が必要です。
システムの機能停止
暗号資産(仮想通貨)の土台となっているブロックチェーンは非中央集権型なためネットワーク全体が機能停止することはないと上述しましたが、可能性がゼロというわけではありません。
2022年5月1日には、暗号資産(仮想通貨)Solanaのネットワークが7時間停止し、ユーザーは同ネットワーク上のコイン(SOL)の取引きや引き出しを制限されました。Solanaは本記事執筆時点で時価総額第6位につけており人気のあるコインの1つですが、同ネットワークでは過去にも同様の問題が発生しています。
(参考:https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-05-01/solana-suffers-seven-hour-outage-as-nft-demand-spills-over)
価格が大幅に下落している際のネットワークダウンは、場合によってユーザーが損失を抱えるリスクがあるということを頭に入れておきましょう。
詐欺
暗号資産(仮想通貨)自体の悪い点ではないですが、仮想通貨市場の盛り上がりに乗じてお金を騙し取ろうとする人は少なくありません。
「このプロジェクトに投資すれば簡単に稼げる」「このコインを今買えば将来遊んで暮らせる」などの甘い言葉は魅力的に聞こえますが、暗号資産(仮想通貨)はまだ発展途上で未知数な部分が多く、「このコインが確実に儲かる」などは誰にも分かりません。
信頼できる情報を取捨選択し、自分できちんと理解できないコインやプロジェクトには投資をしないことが大切です。
最後に
暗号資産(仮想通貨)とは、ブロックチェーン上のデータであり、コインとしてだけでなく様々な用途で利用されています。
近年では、ビットコインを法定通貨とする国や決済手段として認める企業なども増えてきており、暗号資産(仮想通貨)市場はさらに盛り上がっていくことでしょう。
しかし、暗号資産(仮想通貨)の大きな可能性と同時に忘れてはいけないのが、そこには大きなリスクもあるということです。
しっかりとリスクを理解した上で、自分の納得のいくプロジェクトを選ぶことが大切です。